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No. 130 Critical Brief · エージェント権限証明

Atlassian Rovo:文書やリンクに仕込んだ指示で、Jira・Confluence のデータを外へ送らせられることが示された(PromptArmor・Varonis)

指示が利用者から出たかを、送信の前に照合する層が無い

1クリック
認証済みの利用者がリンクを開くだけで、攻撃者の指示が Rovo Chat に読み込まれた。警告も確認も出なかった(Varonis・修正済み)
50 超
Rovo がコネクタでつながりうるサービスの数。届く範囲が、外へ送られうる範囲になる(Varonis)
05-23→08-05
PromptArmor が報告してから公開まで。公開の時点で、文書に隠した指示の経路は直っていないとしている
国・地域国際
事案日2026-08-05
公開2026-08-11
改訂 v2.0 · 2026-10-25
発行Lemma Critical Team
目次
  1. 01TL;DR
  2. 02何が起きたか
  3. 03時系列 — 公表と対応
  4. 04なぜ止まらなかったか
  5. 05対策するには
  6. 06Sources

TL;DR

  1. 01何が起きたか

    Atlassian の AI アシスタント Rovo は、2 つの経路で、Jira や Confluence の社内データを攻撃者のサーバーへ送らせられることが示された。PromptArmor は、指示を隠した文書をアップロードして「Jira のチケットを整理して」と頼むだけで、Rovo が見つけた内容を攻撃者の URL に付けて開くことを示した。Varonis は、リンクに仕込んだ指示を 1 クリックで Rovo Chat に読み込ませる経路(RovoBlast)を示した。

  2. 02なぜ見分けられないか

    Rovo は、利用者の依頼と、文書やリンクに仕込まれた文とを区別せず、利用者の権限で実行した。どちらの経路でも、送る前の承認の画面は出なかった。Rovo の Web 検索を切っていても、文書の経路は止まらなかった。

  3. 03欠けていた層

    RovoBlast は公表の前に修正されたが、文書の経路は PromptArmor の公開の時点で直っていないとされた。効かなかったのは、外へ送る前に、その指示が利用者から出たかを照合する層である。

何が起きたか

研究者
PromptArmor と Varonis Threat Labs が、それぞれ別に報告した。実地の被害ではなく、研究者による実証である。
文書の経路(PromptArmor)
攻撃者が用意した文書に指示を隠す。利用者がそれをアップロードして「Jira のチケットを整理して」と頼むと、Rovo は Jira と Confluence を検索し、見つけた内容を攻撃者の URL に付けて、URL を開く道具で開く。攻撃者のサーバーの記録に内容が残る。チャットの画面は普通に見え、利用者は気づかない。指示の置き場所は、文書のほか、問い合わせのチケットや Web のデータ、つないだサービスでもよいとしている。
Web 検索を切っても止まらない
Web 検索の設定を切っても、検索結果を開く道具は残り、そこから外へ送られた。AI の回答に含めた画像を表示させて送る、別の経路もあるとしている。
リンクの経路(Varonis・RovoBlast)
rovoChatPrompt というパラメータに攻撃者の指示を入れたリンクを作る。認証済みの利用者が開くと、警告も確認も、外から入れた指示だという表示も無く、指示が Rovo Chat に入った。
届く範囲
Rovo は Jira・Confluence・Bitbucket・Slack・Google Workspace・Microsoft 365・データベースなどを読め、コネクタで 50 を超えるサービスにつながる(Varonis)。実証では、Confluence のページ、Jira のチケット、個人データを含む SharePoint の中身が持ち出された(SecurityWeek)。
公表されていないこと
実際の被害の有無、悪用されたかどうか。

用語メモ
Rovo — Atlassian の AI アシスタント。Jira や Confluence などを検索し、利用者の権限で作業する。
指示の仕込み(プロンプトインジェクション) — AI が読む文書やページの中に、利用者の依頼とは別の指示を隠しておくこと。AI はそれを依頼と区別せずに従うことがある。
コネクタ — AI アシスタントを、Slack や Microsoft 365 などほかのサービスにつなぐ仕組み。つなぐほど、AI が読めるデータが増える。

研究者の実証で見ると、送信は次の連鎖で起きた。

図表 1研究者の実証で見た、社内データが外へ出るまでの連鎖

止めどころは ③。外へ送る前に、その指示が利用者の依頼から出たかを照合していれば、④ の送信は起きない。

攻撃者
1
文書やリンクに、指示を仕込む

文書・チケット・リンクのパラメータ。

利用者
2
いつもの操作をする

文書の整理を頼む、リンクを開く。

Rovo
3
仕込まれた指示を、依頼と区別せずに実行する

利用者の権限で、承認の画面なし。

Rovo
4
社内データを、攻撃者の URL へ送る

チャットの画面は普通に見える。

時系列 — 公表と対応

  • PromptArmor が文書の経路を Atlassian に報告する。
  • Atlassian が受け取り、案件番号を割り当てる。
  • PromptArmor が問い合わせる。
  • PromptArmor が、もう一度問い合わせる。
  • PromptArmor が詳細を公開する。公開の時点で「Rovo は依然として脆弱」としている。
  • SecurityWeek などが報じる。Varonis は RovoBlast を DEF CON 34 で発表した。

本件の事実は、PromptArmor と Varonis の公表(一次)に拠る。持ち出されたものの例は SecurityWeek の報道に拠る。RovoBlast の修正の日付は、一次の公表では確認できていない。実地の被害は主張しない。

公表後の対応

  • Atlassian: Varonis の報告(Bugcrowd 経由)を受けて、RovoBlast を公表の前に修正した(Varonis・SecurityWeek)。PromptArmor によれば、文書の経路については 2 か月以上、追っての連絡が無かった。
  • Varonis: 組織に、Rovo がつながるサービスを絞り使わない連携を外す、法務・人事・財務などの重要な範囲を外す、使わない閲覧のエージェントや自動化を切る、記録を見て普段と違う動きに通知を出す、を勧めた。

なぜ止まらなかったか

この事案の失敗は、Rovo が指示を正しく実行できなかったことではない。仕込まれた指示を、利用者の依頼と区別しないまま、外への送信まで実行したことにある。

この事案の核心
Rovo は指示どおりに動いた。利用者の依頼も、アップロードした文書の中の一文も、リンクに仕込まれた文も、同じ重みの指示として扱われ、利用者の権限で外へ送られた。
図表 2検出と証明の落差

ここでいう証明は、AI アシスタントが外へ送る前に、その指示が利用者の依頼から出たことを照合し、記録に残すこと。検出は、怪しい指示や送り先に気づくこと。

証明の層 · 無い指示が利用者から出たかを、送信の前に照合する
落差社内データが
外へ出る
検出の層 · 一部機能を切る・送り先を見張る
STEP 1
指示を仕込む
STEP 2
いつもの操作
STEP 3
区別せずに実行
STEP 4
外へ送信

Web 検索を切るという既存の統制は、文書の経路を止められなかった。統制の単位が「機能のオン・オフ」で、「その指示がどこから来たか」ではなかったからである。この隔たりが検出と証明の落差であり、構造的な欠落である。

同じ構造は、M365 Copilot の EchoLeak(メールに仕込んだ指示で社内データが送られた)にも現れている。

対策するには

AI アシスタントが外へ送る前に、その指示が利用者の依頼から出たかを照合し、照合できない送信は止める。文書・チケット・リンクの中の文は、読む材料であって指示ではない。出どころを照合してから送れば、仕込まれた指示は通らない。検出の代わりではなく、検出の手前に置く層である。

注意したい業界・業務

業界AI
社内のツールに AI アシスタントやエージェントを入れ、コネクタでほかのサービスにつないでいる組織。
業務照会・参照
AI アシスタントに社内の文書やチケットを検索・要約させる業務。つないだ範囲が、外へ出うる範囲になる。

いまの対策で防げるか

対策今回理由
Web 検索を切る効かない検索結果を開く道具は残り、そこから外へ送られた。
文書の中の指示を見つける一部見つければ止まるが、書き方を変えた指示は残る。
送り先を見張る一部怪しい送り先に気づけるが、送った後になる。
つなぐサービスを減らす一部届く範囲は狭まるが、残ったデータは送られうる。
対策必要になるもの
  1. 外へ送る前に、その指示が利用者の依頼から出たかを照合する。文書・チケット・リンクの中の文を、指示として扱わない。
  2. 照合できない送信は止める。送り先と中身を利用者に見せて、承認を求める。
  3. AI アシスタントが何を、どこへ送ったかを、アシスタントとは別に残す。あとから、どの指示で送ったかを示せるようにする。
点検点検チェックリスト

社内データに触れる AI アシスタントについて、組織で確認する 3 項目

  • AI アシスタントがつながるサービスのうち、使っていないものを外しているか。
  • AI アシスタントが外の URL を開く・外へ送る機能を、使う範囲だけに絞っているか。
  • AI アシスタントが何を、どこへ送ったかの記録を、アシスタントとは別に見られるか。

注:機能を切ったり、つなぐサービスを減らしたりするのは、届く範囲を狭める手当てで、指示の出どころの照合の代わりにはならない。Atlassian が文書の経路の修正を発表すれば、この Brief を改訂する。

Sources

  1. 研究・一次PromptArmor “Atlassian Rovo Exfiltrates Data”2026-08-05 · promptarmor.com/resources/atlassian-rovo-exfiltrates-data
  2. 研究・一次Varonis Threat Labs “RovoBlast”varonis.com/blog/rovoblast
報道・解析 2 件
  1. 報道SecurityWeek “Critical One-Click Vulnerability in Atlassian’s Rovo AI Exposed Enterprise Data”2026-08-08 · securityweek.com/critical-one-click-vulnerability-in-atla…
  2. 報道The Hacker News “Atlassian Rovo Can Be Tricked Into Sending Jira and Confluence Data to Attackers”2026-08-08 · thehackernews.com/2026/08/atlassian-rovo-can-be-tricked-into

参照: 「AI 時代のサイバー防衛に残された、最後の層」

ほかでも起きている同じ手口「照会・参照」の事例 18 件を一覧で見る この手口について、自社の場合をメールで相談する(無料)

本資料は公開情報の構造化分析であり、特定組織への監査・診断・推奨ではありません。

この Brief を引用する

Lemma Critical Team. (2026).
"Atlassian Rovo:文書やリンクに仕込んだ指示で、Jira・Confluence のデータを外へ送らせられることが示された(PromptArmor・Varonis) — 指示が利用者から出たかを、送信の前に照合する層が無い".
Lemma Critical Brief No.130. Lemma / FRAME00, Inc.
https://lemma.frame00.com/ja/critical/briefs/130-atlassian-rovo-instruction-provenance/
改訂履歴

現在の版: 2.0

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