定義
フィッシングが成り立つのは、受け取った人が「このメールは本当にその会社から来たのか」を確かめる手立てを持っていないからである。差出人の表示名、ロゴ、文面、リンク先の見た目は、どれも真似できる。送信ドメイン認証(SPF・DKIM・DMARC)は、なりすましメールの一部を受信側で弾けるが、紛らわしい別のドメインから送られたものまでは止められない。
不正アクセス で盗まれた個人情報は、フィッシングの精度を上げる材料になる。氏名や登録住所、購入した商品が本物と一致していれば、受け取った人はより信じやすくなる。日本では 2012 年の不正アクセス禁止法の改正で、フィッシングサイトの開設や、それによって他人の識別符号を取得する行為が処罰の対象になった。
騙される相手は人間だけではない。Varonis の検証では、急ぎを装った依頼メールを受けた AI エージェントが、「依頼主を先に確かめよ」と設定されていたにもかかわらず、送信者を確かめる前に認証情報(模擬)を社外へ送った(Critical Brief 047)。
Lemma での実装
見た目で本物かどうかを判断している限り、偽物は作れる。Lemma は、メッセージや文書の発信元を暗号で確かめられる形にする。発行者が内容に署名し、受け取る側は「この発行者が、この内容を出した」ことを、外見ではなく プロヴナンス・プルーフ で検証する。
正規の発信元が証明を付けて依頼を出す運用であれば、AI エージェントには、外から届いた依頼を実行する前に、発信元の証明を確かめる規則を組み込める。証明が付いていない、あるいは検証に失敗した依頼は、認証情報の送信や支払いのような操作に進む前に止まる。
発信元を確かめた記録も 監査証跡 として残る。後から「どの依頼を、どの根拠で本物と判断したか」を辿れる。